■World

物語のバックグラウンドとなる世界観や用語を紹介します。

 ■風属性と火属性

 火は風に煽られて勢いを増す。

 炎の燃焼には風(酸素)が不可欠であり、燃焼することにより、風は火に消費される、ということになる。

 火は勢いを増し、風は(総量としては僅かなものではあるが)減少するということになる。

 そういった化学反応的な関係性をさしはさまずとも、穏やかな性質を持った風の精霊は、猛々しい火の精霊を厭う傾向が強いという。

 

 実際のところ、炎の周囲で巻き上がる風、いわゆる熱風や熱気は、風ではありながらも精霊的な属性の大半は火のものとなっているという。これは水(冷気)と共にあるときも同様で、身を切るような寒さ、凍傷を及ぼすような寒風においては、風の支配力よりも水の生霊力が大半を占めることが多い。

これは風の精霊の性質が穏やかがゆえ、他の精霊力に多分に影響を受けやすい、ということが理由とされている。

 

 もちろん風にも「熱気」「寒気」と共に、魔法の形ならずとも鋭い風の刃で人を傷つけることもあり、猛々しい側面も持っているのも事実であり、全ての場合においてあてはまることではないことではあるのだが。

 

 風属性の柔軟性、適応性の欠点をあげつらう流れとなってしまったが、もちろんこれらの性質は大きな強みともなる。それは、ここでの主題である「例外」、風属性が火属性を上回る(もしくは有利に運ぶ可能性もある)ということでもある。

先にも述べたように、火属性は風属性を謂わば「食らう」関係性にあるため、その場に風の属性が満ちていれば、それに誘導される動きをしやすくなる。

 

 つまり、火属性の炎を、風属性の風を「餌」に誘導することが可能となってくる。極端な例ではあるが、対象の敵に向けられて放たれた火属性の魔法の炎を、風属性の魔法を誘導するように放てば、その狙いを外すことも可能であるということだ。

 

 無論、精霊の炎は通常の炎とは異なり、精霊――術者によって制御されたものであるから、一事が万事、狙い通りにいくというのは難しい。それに、何度か述べているように、風は火の勢いを強くする。一歩間違えれば、火属性魔法の威力をいたずらに強めてしまうだけのことにもなりかねない。

 ここでもやはり、高レベルでの魔法精度(火勢を上げ過ぎない程度に抑えつつ、火の誘導を行えるほどには強く)が要求される。